真空包装機とは
食品の劣化は、食品に含まれる油脂、ビタミン、色素、香気成分などが、空気中の酸素と結合して酸化する事により起こります。
また、カビや酵素、害虫が生存するには酸素が必要です。さらに、外気に触れる事により、食品に含まれる水分が蒸発し、乾燥してしまいます。『真空包装機』は、食品に触れる酸素を遮断し、食品を劣化させる要素を取り除いて、新鮮でできたての美味しさを長く保つことができるようにする包装方法『真空包装』『真空パック』を行うための機械です。
真空包装機導入の利点
保存上の利点
- 油脂成分の酸化を防止
- ビタミンCなど、体に必要な栄養成分の保持
- 外気を遮断し、水分を保持して乾燥を防ぐ
- 香りの素となる成分が酸化する事による異臭など、臭いの変化の防止
- カビ、好気性菌(生存に酸素を必要とする菌類。ほとんどの菌がこれにあたる)、
酵母による腐敗、不要な発酵の阻止
- 害虫の侵入を防止
調理上の利点
- 食材内の空気まで抜けるので、調味液などを一緒に真空包装機を利用して真空パックする事により、素早く味をしみ込ませることができる。
- 真空包装機による真空包装と科学的根拠に基づく温度管理を組み合せることにより、食品の劣化を最小限に抑え、長期保存が可能な料理を計画的に製造することが可能。
真空包装機の利点を生かした調理方法についてはこちら
経理上の利点
- 長期保存が可能なので、安価で鮮度の高い時期に食材を一括で仕入れることで原価を削減。
- 食材廃棄のロスを軽減。
- 一般に料理提供の1週間前※から仕込を開始できるので、忙しい時間を避けて仕込みをすることで生産効率を上げ、
労働時間や人件費の無駄を省くことが可能。
※仕込み開始が可能な期間は、保存が可能な期間に準じるため、食材により異なります。
真空包装の注意点
食品中に含まれる空気は完全に除去することは非常に難しく、袋のフィルムを透過してくる酸素を防止する事はできません。
また、ポツリヌス菌などの空気を嫌う性質の菌類が繁殖しやすい食品、変形や液が分離しやすい食品には、真空包装は適しません。
小麦粉などの粉状の食品は、脱気中、空気と一緒に内容品を吸い込んでしまうため、粉類に対応した機能のある真空包装機が必要になります。
真空包装機のしくみ
真空包装は、内容品の充填された袋内の空気を抜き、真空にした状態で密封シールすることで、袋の中は空気が除去された状態なので、袋のフィルムは内容品に密着します。一連の過程を一括で行うことのできる機器が、真空包装機です。
代表的な真空包装機の種類
ノズル式
ノズル式の真空包装機は、袋の中の空気をノズルで吸い出して密封する包装方法で、一般家庭向けに普及しているタイプの真空包装機に多く使用されている方法です。
チャンバー型
チャンバー型の真空包装機は、一般的に、真空にできるボックス(真空室/チャンバー)内に内容品を入れた袋をセットし、ボックス内全体を真空にした状態で袋を密封シールする方法で、主に業務用で普及している真空包装機に多いタイプです。チャンバー型真空包装機には、空気の代わりに不活性ガスを封入して密封することで、変形しやすい食材の形を守りながら、鮮度を保つことのできるガス封入機能を備えた機種もあります。
チャンバー型真空包装機について
ここでは、業務用真空包装機の主流であるチャンバー型について簡単に説明します。
チャンバー型真空包装機の作業工程
真空ポンプで真空室内の空気を抜くことにより、真空室内の圧力が急激に下がります。真空室よりわずかに遅れて袋内の圧力が下るため、圧力に差ができて袋が膨らみ始めますが、しばらくすると収まります。
※真空包装機のガス封入機能を使う場合
ガス封入機能を備えた真空包装機で、ガス封入包装を使う場合、ここで抜いた空気の代わりに不活性ガスを袋内に封入します。
真空包装機の真空室内に設置されているシーリングバーで、真空袋の中の圧力が低い状態で袋をシールし、密封します。
真空包装機が脱気をした空気を開放して真空室内の圧力を元に戻すと、真空袋内の圧力よりも真空室内の圧力が大きい状態になるため、袋が内容物に密着して真空包装状態になります。
真空包装機(チャンバー型)の真空室内のしくみ
※レマコム製真空包装機のイメージです。真空包装機の発売元や機種により異なる場合があります。
レマコム 真空包装機の紹介
レマコムでは、真空包装する食材の大きさや種類など、用途に応じた真空包装機を各種ご用意しております。
調理の幅を広げる真空包装
クックチル・クックフリーズ
クックチルとは加熱調理(cook:クック)した食品を、ブラストチラーや氷水チラーなどで菌の繁殖しにくい温度まで急速冷却(90分以内に3℃以下)し、チルド状態(0℃〜3℃/chilled:チル)で保存するという意味です。
クックフリーズは、クックチルの急速冷却の過程で、20分以内に食品の中心温度が0℃〜-5℃を通過する温度まで急速冷凍し、-18℃以下で冷凍保存(freeze:フリーズ)します。クックチルもクックフリーズも、保存した食品を必要に応じて再加熱して提供できる状態にする調理システムです。
チルド保存、冷凍保存の際に真空包装機で真空包装を行えば、水分の蒸発による乾燥を防いだり、袋のまま再加熱ができ、クックチル・クックフリーズの利点を更に活かすことができます。
クックチル・クックフリーズのメリット
食材の廃棄量の削減
計画的な料理の生産が可能なので、食材の廃棄量を減少させることが出来ます。
料理の品質のバラつきを防止
1ヶ所で調理を行い、複数の場所に温度管理をしながら配送。
決められた温度や時間で再加熱を行うことで、同じチェーン店の各店舗で料理の味がバラつくという現象を防げます。
調理時間と人員の合理化が図れる
ピーク時を避けての調理が可能なため、時間や人員を計画的に配分することで合理化を図ることができます。
また、再加熱の時間と温度をマニュアル化することにより、熟練した調理人の数が少なくて済み、パートやアルバイトの活用が容易になります。
食品衛生管理がしやすい
時間と温度を基準とした調理のマニュアル化は、同時に食品の衛生管理にも繋がります。
スピーディーな料理提供が可能
事前の作り置きが可能なので、ピーク時でもスムーズに料理を提供する事ができます。
真空調理法
生、又は下処理済みの食材を、調味液と一緒に真空包装機で真空パックし、そのまま科学的根拠に基づいた加熱調理温度と時間で湯煎又はスチームで低温加熱調理する方法を、真空調理法といい、煮る、蒸す、炒めるなどといった従来の調理法と並ぶ、新しい調理法と言われています。
加熱は素材の適性に応じて58℃〜95℃の温度帯で行い、菌の繁殖しにくい温度まで急速冷却(90分以内に3℃以下)した後、チルド又は冷凍保存することで、品質の劣化を最小限に抑えながら、長期保存が可能になります。
真空調理法のメリット
栄養価の減少を抑えて美味しい料理
食材と調味液を一緒に真空包装機で真空パックすることで、真空包装時に脱気される食材内の空気の代わりに調味液が浸透し、味がよくしみ込みます。
調理のマニュアル化により品質のバラつきを防止
科学的根拠に基づいて時間や温度を管理して調理を行うため、誰が調理を行っても品質に差が生じにくく、また、計画的に調理を行えるので、廃棄などのロスを軽減する事もできます。
クックチル・クックフリーズ/真空調理法に適した機器の紹介
クックチル・クックフリーズ、真空調理法共に、真空包装機の他にも、温度や時間管理に適した機器を利用することで、各々の利点をより引き立てることができます。
加熱調理機器
適切な温度と時間の管理が肝心な真空調理やクックチル・クックフリーズにおいて、加熱調理を行う機器は、設定温度だけでなく、実際の庫内温度表示や芯温表示が可能であることが重要になります。
真空調理や加熱後真空包装機で真空パックした食品を、再加熱・提供するまで保存する場合は、チルドは0℃〜3℃、冷凍は-18℃以下で保存することで、品質の劣化を最小限に抑えることができます。